OECD原子力機関(NEA)は、新たなレポート「福島原子力発電所事故後の5年:原子力安全の改善と教訓」を発表した。
このレポートは、原子力の安全性を向上させるとともに2011年3月の事故から得られた教訓を実行していくために、NEA及びNEA加盟国によって国レベル、国際レベルで行われた活動に焦点を当てている。また、一連の結論といくつかの残された課題を提示している。
NEA事務局長ウィリアム D. マグウッド, Ⅳ世は、このレポートに関し、福島の悲劇があったものの、事故から得られた教訓を踏まえ、NEA加盟国の規制機関は自国の原子力発電所が引き続き安全に 稼動していると考えている。」と述べている。また、自然事象への対応や防災のために行われてきた取組について、「福島の大きな教訓は、私たちはすべての自 然事象を予測できるわけではないということである。しかしこのレポートが示すとおり、事故から学んだ教訓をもとに、原子力発電所は5年前に比べてより強靭 なものとなり、予期せぬことにもよりよく備えられるようになってきている。」と話している。
このレポートの作成を主導してきたNEA原子力規制活動委員会(CNRA)の議長であるジャン-クリストフ ニエル フランス原子力安全機関(ASN)長官は、国際協力が原子力安全を継続的に改善していくための重要な要素であると強調し、「NEAの活動は、知識や経験を 共有し、また原子力規制体制や原子力発電所の安全をより向上させるための効果的な手法を明らかにし実行するために協働するフォーラムとして世界でトップレ ベルの各国の専門家を結集することである」と述べている。またニエル長官は、原子力の安全確保において、事業者が一義的な責任を十分に果たすこと、規制 機関の独立性及びステークホルダーの関与が重要である」ことを強調している。
マグウッド事務局長は、事故以降、NEA加盟国は安全性の向上に向けて大幅に前進しており、現在も更なる進歩を続けているが、まだなすべきことがあると指 摘する。原子力の安全確保に関する人的側面の取り組み、例えば事業者と規制機関に安全文化を根付かせることや、NEAの国際共同研究プロジェクト等を通じ た安全研究から引き続き学んでいくことが必要である。また、「原子力の安全確保は、運転の経験と研究を通して学ぶ中でさらに進化していく継続的なプロセス であるということを心に留めておくことが重要である。単に福島で何が起こったかということだけではなく、事故に対してどのように対応したかということも含 めて学ぶことが必要である。」と強調している。